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【バカ】シリーズのイヴァン編です。
(あ。イヴァンがバカってわけじゃないですよ←)

今回のが一番長いんじゃんなかろうかと・・・思われます;;
ヤンキー主体は楽しいんですよねw
スラング飛びまくりーの、ガラ悪ぃーの^^


イヴァンをかっこよく書く!!


できてますでしょうか・・・@@;

【続きを読む】からどうぞ^^
 




【side:IVAN】


「ちっ…めんどくせぇことになりやがった」


俺は血の滲む腕に包帯を巻ながら、隣で眠る女を見た。
今は現場の片付けも終わり、本部へと車を走らせているところだ。
ベルナルドの指示で、気絶したカタギの女を俺の戦乙女に乗せて運んでいる。
ファック、俺の車はタクシーじゃねぇっつの。
舌打ちしつつ、女をじっくりと眺めた。
さっきはそれどころじゃなかったから、気にも止めなかったが

――イイ女だ。

ボリュームのある艶やかな赤毛に長い睫。
薄い上品な唇。
芯の強そうな眉は、はっきり言って俺の好みだ。
だが―――

今、俺の頭の中を占めているのは、クリクリとよく動く丸い目に、悪ガキのように笑う唇。
ボサボサなくせに、キラキラと輝くハニーブロンド。
唇の柔らかさとか、
細められた目とか、
暖かい…体とか…

くそ…たまんねェよ。


「ヤりてぇな…」

「…ん…」


思わず声に出た呟きと同時に、女が意識を取り戻した。
ジーザス…
俺はジャケットを羽織り直し、女をビビらせないように腕の包帯を隠した。
頭のガーゼは…どうにもなんねーから放置だ。
女はゆっくりと目を開き、目の前の俺の姿を確認した「キャアアアア!!」

瞬間絶叫した。


「…」


まぁ当然だよな。
俺は動じることなく、女の絶叫が止むのを待った。


「た…助けて…殺さないで…」

「先ほどは、大変怖い思いをさせてしまい申し訳ない。
神に誓って、我々は貴女に一切危害を加えないと約束します。
…落ち着いたら、少し話をさせてもらえませんか。レディ」


泣きながら震える女に、威圧感を消した声音でゆっくりと話しかける。
意識して表情も柔らかく変化させた。
なるべく早く警戒心を解かせね―といけねぇからな。


「あ…あなたは…さっきの男の仲間じゃ…」


女はしゃくりあげながら、怯えきった目で俺を見た。
シートの隅っこでガタガタと震える様子に、GDのクソ豚共への怒りがこみ上げてくる。
カタギに手出しやがって、チンピラ風情が…。
俺は顔に出かけた苛立ちを押し込め、慰めの表情で話を続けた。


「奴らは『グレイヴ・ディガー』このデイバンを荒らすチンピラです。
我々は『CR:5』奴らをこの地より排除するべく動いています。
あなた方市民に手出しすることは決してありません」


あまりマフィアという言葉を使いたくねぇから、俺らの正体は濁しておいた。
頭の良い女なら、それとなく勘付くだろ。
もしくは親父さんから名前くらいは聞いたことがあるかもな。
とりあえず、まずは俺らが危害加えねぇんだってことを、わからせねーと話もできねぇ。
俺は外面用の別人になりきった。


「…ほ…本当に…殺さないの…?」

「神に誓って…」


降参のポーズよろしく、両腕を広げ丸腰であることを証明した。


「…」


しばらく真意を探るように、俺の目を見つめていた女は涙をハンカチで拭い、佇まいを正した。
自分に害を成す者では無いと判断したらしい。
ほぅ…さすがイイトコのお嬢さんだ。
こーゆー時の肝が据わってる。
どことなくロザーリアお嬢を思い出させた。


「ありがとう。どうかそのままで。
今、貴女を安全な場所までお連れしています。
行き先はデイバンホテル。
そこに私の上司が居るのですが、貴女の事情を話したら、ぜひお詫びをさせて欲しいとのこと。
どうか、しばしの間お付き合い願います」

「デイバン…ホテル?」

「えぇ。素晴らしいホテルです」

「そこなら…父の…お知り合いが…」


蚊の消え入りそうな声で呟く。
なんつーか…ほんと生粋のお嬢様だよなぁ…
お嬢ともタイプが違うし、ましてやあいつとは…
ジャンの野郎もこれっくらい素直で従順だったら面倒じゃねぇのに…
ってあいつがこんな大人しかったらダチにすらなってね―か。
なんて考えながら適当に調子を合わす。


「そうですか…でしたら、よけいに失礼の無いよう丁重にお迎えしないといけませんね」


このお嬢さんホテル関係か?なら金持ってやがんな。
まぁ、あとはベルナルドの野郎のお手並み拝見だぜ。
ホテルか…儲かりゃでけぇな。
次のしのぎで…
いや難しいか…
だが土地を押さえられれば…


「…あ…あの」


次のしのぎに頭を巡らせていると、恐る恐る女が声をかけてきた。
一瞬飛んだ意識を引き戻されて、なんだかまたどっと疲れが押し寄せた気がした。
(完璧にワーカーホリックだぜ…ファック)


「…何でしょうか」

「怪我…されているのですか」


女は遠慮がちに俺の頭部を見やった。


「あぁ…これは…大した傷ではないのでお気になさらず」


やんわりと距離を取る。
俺は常日頃、商売抜きのカタギとの慣れ合いは避けてぇから、あまり深くは関わらないようにしている。
だが、女は引く姿勢を見せなかった。


「…あの…よければ…診ましょうか」

「…貴女がですか?」

「はい…一応…医者の勉強をしていますので…」


ヒュ~。お嬢様で医者かよ。
恵まれてる奴らは、とことん恵まれてるってこったな。
この生まれ持った差が、俺には昔から納得できなかった。
だから自分の力でのし上がることに命をかけてる。
俺にとっちゃこのマフィアの世界が、俺の力を示すのに最もわかりやすく、適した場所だった。


「いえ…貴女の手を汚してしまう。俺には触れない方がいい」


内なる感情を1ミリも出さずに微笑んでやる。
この女には、俺の内面を読むことすら出来ねぇだろうな。


「あ…ごめんなさい」

「いえ…」


そこでようやく女は静かに俯き、車が停車するまで無言でいた。

 

 

メルセデスがゆっくりと曲がり静かにエンジンを止めると、後部座席のドアが丁寧に開かれた。


「お待ちしておりました。ご案内致します」


黒のスーツをびしっと着込み、頭を撫でつけた男が手を差し伸べた。
女は自分に向けて差し出された手に、不安そうな顔を向けてくる。
俺は笑顔のまま頷き、手だけで促した。
すると、納得したのかおずおずと手を取り車から降りて行った。


「…ふぅ」


時折不安げにこちらを振り返る後ろ姿をしばらく眺め、俺は大きな深呼吸を一つついた。


「さて…行くか」


戦乙女を背に、本部へと足を向けた。





最上階へ上がると女の姿は無く、直接応接室へ連れて行かれたようだ。
扉の前で待機しているベルナルドの部下にさっきの掃除のことを伝え、俺は踊場にある豪華なソファに横になった。
ジャンは…あいつと一緒か。
ちっ!今日は、無理やりあのハゲからジャンを引き剥がして、早々に部屋に帰ってやろうと思ってたのによ!
ファッキン!女との話し合いが終わったら、さっさと引っ捕まえてやる!

溜まったイライラに目を瞑っていると


「ボス…あの伝言が…」

「あ゛ぁ゛?んだよ」


遠慮がちに声をかけてきた部下に、イライラのまま答える。
薄目を開けて睨みつけると、男は言い澱んだ。


「あの…カポからの伝言なんすけど…」

「ジャンの?」


あいつの名前に、反射的に体が動く。
部下は、そんな俺の様子に一瞬驚いた顔をした。
シット!何も言うんじゃねぇ!
俺が一番驚いてんだよクソったれ。


「あ…はい…ボスが本部に着いたら、ダウンタウンの部屋に連れて来るようにと」

「ハァ?だってあいつここに…」

「カポは今部屋に帰って来てるんで…」

「ハァァァ?!」


思わず大声をあげた。
当然だろ?!
だって今までそこの部屋に居るもんだとばかり思ってたんだぜ?!


「このボケ!んでもっと早く言わねんだ!」

「す…すいません!」


ジーザスシット!完全にすれ違ってんじゃねぇかよ!!
くそっ!ファック!ファ―ック!
っつーことは今頃ジャンの野郎は俺の部屋に居るってことかよ!
アァァ!
報告なんか無視して、女送ってさっさと帰りゃ良かったぜ!


「ファック…」


青筋立った俺に、部下はそそくさとその場を去っていきやがった。
顔が見てぇって思うとこれかよ…
今すぐにでもとんずらしてぇが、どうも帰れ無さそうだと俺の勘が囁く。
俺は話がさっさと終わることを願い、筆頭幹部に怨みの言葉を吐き続けた。

 

 

しばらくすると豪華な扉が開き、ベルナルドと女が出てきた。
ベルナルドは俺の姿を見つけると、笑顔のまま近付いてくる。
へっ…何か掴んだか。


「ご苦労様、フィオーレ幹部。良く無事で帰ってきてくれた」


今の俺にとっちゃ胸糞悪くなる満面の笑みを張り付かせ、握手を求めるフリをして耳打ちする。


『彼女はアメリカでも五本の指に入る有名ホテルのオーナーの娘だ。
役員連中とも交流がある超大物だよ。
こちらとしてもおいしい人物だ』


早口でそれだけ伝えると、すぐに体を離した。
やっぱ社長令嬢だったか。
まぁそこまで大物とは思わなかったけどな。


「それでだ。フィオーレ幹部、レディをご自宅まで送って差し上げてくれないか」

「…」


―――ハァ?!

その言葉に、何で俺が!と叫びそうになった。
てめぇの部下が送るんじゃねぇのかよ!
俺の眉がピクっと痙攣したのをベルナルドは見逃さなかった。


「レディのたっての希望でね。君以外の男性だと不安なんだそうだ。
光栄な申し入れじゃないか。受けてくれるだろ?」
『デカい繋がりは今後有利になる。
組の為にも…ジャンの為にもだ』


小声で囁かれた言葉にジャンの顔が浮かぶ。
そうだ…奴を最高のボスにのし上げてやるって決めたんだ。
俺のことでボスの座を剥奪された時に…そう誓った。


『んなことてめぇに言われんでもわかってらぁ』
「そこまでレディに言って頂けると、送らないわけにはいきませんね。
わかりました。お任せを」

「頼むよ。っとその前にフィオーレ幹部に着替えを」


ベルナルドはもう一度握手を求めると、近くの部下に替えのスーツを持って来させた。
確かに今の格好じゃホテルに入れてもらえねーだろうな。
帰れ無さそうだという勘はこのことだったか・・・ファッキンアス。
女を客室で待たせ、俺はさっさと着替えることにした。

いざ着てみると、ズボンもジャケットも俺のサイズにジャストフィットだ。
奴はこうなることを予測して用意していたに違いない。
あの野郎!チッと舌打ちして、鏡の前でネクタイを直した。
黒の三つボタンジャケットにグレーのストライプのシャツ。
ネクタイはスカーフのような軽さで、銀のカフスが胸ポケットから続いている。


「けっ…こんなもんか…」


なんつー動きずれぇ服だ。
あいつらこんなもんばっか着てるから、いざという時に体が動かねんだ。
と、年寄り緑と赤頭に悪態を付く。


「とりあえず、とっととあの女を送って帰るか。
……あのボケ…ここで大人しくしてろっての」


そしたらすぐにでも奪って連れて帰るのによ…

最後に腰に愛用の銃を差して、その部屋を出た。


「お待たせしました。さぁこちらへ」


次の瞬間には作った笑顔を張り付かせて―――

 

 

移動中の車の中でも女は傷を気にしながら、俺の事を色々聞いてきた。
ああん?この女…俺に興味持ってやがんのか?
けど、今は正直他の女には興味がねぇ。
この俺様がだぜ?へっ!どこの笑い話だよ!
俺好みの女と二人っきりの車内(まぁ運転手はいるけどな)で、頭ん中は――
―――ジャンのことばっかだ

…シット!

こんなはずじゃねぇ…俺は男なんざ反吐が出る!
付き合う!?
冗談じゃねぇ!気持ちわりぃ!
今でもそれは変わりゃしねぇ。

でも…なぁ…

あいつだけなんだ。
男も女もねぇ…ジャンにだけ…興奮する。
何でか…なんてわっかんねーよ!
あいつの匂いだけでたまんなくなる。
今すぐ抱き締めてぇ…キスして、押し倒してぇ…

んなこと思うの…てめぇにだけなんだぜ?
ジャンの野郎にはぜってー言わねぇけどな。
 

 
俺は女の話を適当に受け流しながら、周囲に注意を向けた。
GDの襲撃を警戒しながらの護送だ。

ようやく目的のホテルに到着し、堂々と戦乙女を玄関前に停車させた。
急に現れた純白のメルセデスに、道行く人がざわついた。
ははっ!クールだろ?
開いたドアから俺に手を引かれて出てきた令嬢に、周囲も納得したかのように静まった。

(ここは…あのマーケットの前なのか)

見覚えのある通りに、少し前の記憶が蘇る。
このホテルは目にしていたが、その時は特に気にも止めていなかった。


「どうぞ」


ゆっくりとホテルの扉を開くと、女は柔らかく微笑んで


「ありがとう。ミスターフィオーレ…」


軽い会釈をしながら中へと入っていった。


「てめぇらは外で待機だ。何かあったらすぐに知らせろ」

「はい。ボス」


手短に部下へ指示を出すと、俺も女に続き中へと入った。

 

それを見ている存在が…居たなんて知らなかったんだ―――




⇒続く

イヴァンはジャンさんだけ特別に思ってるんだけど、ジャンさんも照れ屋だから…っていうすれ違い

 

 







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