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イヴァジャン【バカで】の続きです。
今度はイヴァン視点です。長いです。

ちょっと内容が重複することもあるかもしれませんが、

知ってる知ってるぅ(´∀`)

みたいに流し読みして下さいませ。では【続きを読む】からどうぞ^^


【side:IVAN】



ファック!
 

眠れねぇ…イライラする
 

疲れてるからか?…いや
 

――あいつが居ねぇせいだ

 

 
ホーナスのファッキンアスとGDのクソ共をボコボコにしてから随分立ったような気がする。
だが、俺にはその余韻に浸る余裕なんてありゃしなかった。

禁酒法が終わり、俺のしのぎの多くを占めていた夜の商売が危うくなっていた。
ファック!こんな時にやってくれやがって…
俺は組の中枢の立て直しはベルナルドやルキーノに任せ、ハマるとデカい数字を叩き出す港のしのぎを強化した。
取引先は主にカタギの会社だ。
俺はめったに着ないピリッとしたスーツを着込み、昼、夜なくあちこちを渡り歩いた。
着なれねぇスーツや、歩きすぎて潰れるマメに辟易しながらも、その成果は着実に数字に現れていた。

よし…これで夜の開いた穴を埋めれんだろ。
くそ…いってぇな。

メルセデスの後部座席に座り、血の滲んだ靴下を脱いだ。
こんなに歩いたのは下っ端の頃以来だ。
あの頃はまだ部下なんて持っちゃいなかったから、完全に自分だけが頼りな状態だった。
まぁ今もたいして変わんねぇけどよ…。
外面変えたり、臭い台詞並べたりってのはこん時身につけたんだっけか。

なのに今じゃ…よ…。

組のことを任せるなんて言葉が浮かぶくらいに自分は変わってしまった。
俺がこんなに腑抜けになったのは、それもこれもあいつのせいだ。
――あの金髪の馬鹿のな!
あいつの脳天気に笑う顔が思い浮かんで息が詰まった。

ここずっとアイツと、ジャンと会っていない。
ジャンはボスの仕事を覚えるとか何とかでホテルに籠もりっぱなしだし、俺はこんな状態だから構ってやる暇もねぇ。
たまに俺が報告なりなんなり渡しに行く時に顔をつき合わせるが、特に会話はねえまますぐに離れる。
あいつの目が何か言いたげに揺れるが、気付かないフリをした。

俺は深い溜め息を吐いて深く座席に沈み込んだ。
思いの外体にキてやがる。
…ここんとこまったく寝れてねぇ。

「くそ…」

目をつむり、ジャンの温もりを思い出そうとしたら車内の内線が鳴った。
助手席の部下が素早く取ると、内容を俺に伝えてくる。

「ボス!駅前の通りでGDの奴らが暴れているそうです!どうしやすか!」

「どうするもこうするもねぇ。ぶっ潰せ!!」

「はい!このまま向かいます!」

俺の一声で、純白の巨体が大きく向きをかえ、駅前へとエンジンを鳴らす。
ちょうどイライラしてたとこだ。
ファッキン野郎共で憂さ晴らししてやる。

俺はネクタイを緩めて口端を引き上げた。

 

 

キキィとタイヤを鳴らし、俺の戦乙女は堂々と道に乗り上げた。
途中、喧嘩から逃げてきたらしい雑魚どもを数人つき飛ばしてきた。
運がよけりゃ生きてんだろうよ。

俺よりも明らかに年上のいかつい男が、頭を下げながら後部座席のドアを開けた。
親子ほど年の離れた奴らでも、俺の顎一つで動かせる。
ジャリと砂を踏みつけ、砂埃と男共のむさ苦しい怒号が飛び交う路地裏に降りた。
イイ靴とイイスーツが台無しだ。
まぁスーツぐれぇまた買やいい。
見た目ばっか気にしてる他の奴らと違い、俺は動きやすけりゃ何でもいい。
じじいとかがうっせーから一応何点かタンスに眠っているけどな。
家のタンスを思い浮かべると、あの野郎も頓着しないんだったな、なんて金髪が頭をよぎる。

あ゛ーーシット!んな場合じゃねぇっての。
切り替えろ頭。

俺の一瞬の動揺には誰も気付かず、数人の男が走り寄ってきた。
俺は今、完全にこいつらをまとめるCR:5の幹部の顔になっている。

「ボス!」

「おう!どんな状況だ!」

「はい!奴ら根性ねぇただのチンピラです!
ただ、数が多くて、ライフル持ってる奴がいるみたいで…ちょいと苦戦してます」

報告した男は申し訳なさげに頭を垂れる。
――ったく情けねぇ!

「へこたれてんじゃねぇ!てめぇらはヤクザだろうが!!
GDのファッキン野郎共は一人残らずぶっ殺せ!!皆殺しだ!」

俺が殴るように喝を入れると、うおおおと怒声が響き渡った。
そうだ。
俺達はチンピラじゃねぇ。
ヤクザだ。

喧嘩売ったことを後悔させてやる。

俺は銃を構え戦場に突っ込んだ。

 

「はぁ…はぁ…っち!だいたいは片付いたかよ」

「っすね…何人か息のある奴がいますね。どうしますか?」

「あ~?ベルナルドんとこに送っとけ。どうせ後でうるせーからよ」

「わかりました。…ボス大丈夫ですか?」

俺の頭と腕を心配そうに見つめてくる目とかち合った。
痛みはそれほどねぇから、弾がかすっただけだろ。
んな目で見んじゃねえ!
幹部の俺がこんなかすり傷くらいでやられるわけねーだろが。

「…んなことより負傷した奴の手当てと息してる奴の拘束を急げ。
俺ぁ報告してくらぁ」

「はい!」

バタバタという足音を背に、一番近い公衆電話に向かいながら額の汗を拭うと、袖口にべっとりと血がついた。
おー…思ったより出血してやがんな。

先ほどの心配そうに見つめる部下の顔が浮かんだ。

…まぁ頭は少しの傷でも血が出るし、大したことねぇだろ。と、公衆電話の扉に手をかけようとした瞬間

「キャアアア!!」

この場にはそぐわない女の叫び声が木霊した。
条件反射的にバッと声のする方へ振り返る。

なんだ!!

「はははは!CR:5のクソ共が!!よくもやってくれたじゃねぇか!!だけどなぁ…おら!」

「ひっ!やめ…」

鼻血を垂れ流したまま、どこに隠れていたのか、男が狂った目でこっちを睨み付けていた。
その腕には拳銃と、何が起きているのかわからないと、顔を恐怖でまっ青に染めた女。
こいつもどこに居たんだか…。

「カタギの女か…サノバビッチ!」

俺は低い声で吐き捨てた。
鼻息が荒く、目が血走ってるとこを見るとヤクをキメてやがったのか、完全に狂乱状態だ。
こーゆー奴は、追い詰められると何をしでかすかわからねぇ。
俺は刺激させないようにそっと拳銃のトリガーに指をかけた。

「くくく。動くな…動くなよぉ…。
ここでよぉ俺がこの女を殺したらよぉ!てめぇらは女一人も守れねぇタマなし野郎ってことだ!!
はははは!マザーファッカーの腰抜け共が!いい気味だ!」

狂った奴の上機嫌な口上が続く。

女を殺す?
このボケが。
俺らのド真ん中で喧嘩売ってタダで済むと思うなよ豚野郎。

俺はチラリと側の部下に目線を送った。
その視線の意味を理解した男が即座に行動に出る。

「おい!!動いたらこの女をぶっこ」
ダァン!

男が目線を逸らした瞬間、俺の弾が奴の脳みそを撒き散らしながら頭を貫通していった。

べらべらとしゃべり過ぎなんだよファック。

狂ったファッカーは最後まで言い終えることなくあっけなく死に、女はショックを受けそのまま気を失って倒れた。


「ジーザスシット…馬鹿のせいで面倒なことになったじゃねぇか!」

これからの展開に軽く頭を抱え、まずは報告か…と重たい腕を上げる。
ダイアルを回し横目で様子を伺うと、部下が女を安全な場所へ運んでいた。
何かあの女…と、一回のコールで繋がる電話。

「どうした?」

少しかすれた声が耳に届いた。
難しい顔をした、電話が恋人の眼鏡が頭をよぎる。
また前髪が剥げそうだな。

「俺だ」

「イヴァンか。どうした。何かあったか?」

「あぁ…駅前をGDのクソ共に襲われた。
ファック!奴らライフルなんか持ち出しやがった!
今掃除が済んだから、まだ息のある奴を引きずって行く」

「そうか。ご苦労だったな。
ライフルね…どこにまだそんなモノを隠し持ってたんだか。
わかった。調べてみるよ。後の処理は任せてくれ」

「あぁ。あとな…」

と、チラリと女の方へ目線を向ける。
やっぱり…

「ファッキンアスがカタギの女を人質にしやがってよ。
今女は気絶してんだが、やけに着てるモンが小綺麗だからちょっと気になってよ」

「小綺麗?…イヴァン、顔に見覚えは?」

「ねぇ。知らねー女だ」

「そうか…でも着ている物がイイモノってことは上流階級の関係かもしれないな。
念のためその女性を本部に連れて来てくれ」

「はぁ?今からかよ!」

まぁ、そう言ってくるんじゃねえかとは思ってたけどな。

「あぁ。お前も報告で一旦こっちに来るだろう?
勘違いならホテルからそのままおかえり願えばいいし、要人の娘ならたっぷり恩を売っとくさ」

「っけ!今から向かう」

相変わらずネチっこい野郎だ。
俺はそれだけ言うと、返事を待たずに電話を切った。
無意識に出る深い溜め息に、体の疲れがピークに達していることを感じる。
ファック…今日の営業は終いにするか。
報告が済んだら部屋に戻ろう。
まぁ部屋に戻ったとしても、眠れることはねぇんだろうけどな…。

乗り込んだメルセデスの車内で、またジャンの顔が浮かび、本部で会えることを願った。

 


そのすぐ側をあいつの乗ったフォードが通過したのに気付かずに――



⇒続く

何か色々デタラメなこと書いてます・・・読み流しt







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